1966年の6月のある日曜日、14歳の私は親友のIが住む郊外に向って、都心から一人バスに乗った。小雨の中、バスが河を越えると、田植えの後の瑞々しい風景が広がっていた。乗客は疎らで、私の目の前には同じ年頃の少女が制服を着て、きちんと座っていた。ショートカットの陽に焼けた健康そうな顔立ちから、好きなクラスの女の子を思い浮かべていた。...
最近は、食中毒の患者さんが多いですからお気をつけください、という大使館医務官からの情報があったばかりなのに、当たってしまった。原因は昼食、行きつけのレストランの日替わりメニューで、「海産物のクリームソース」。烏賊、貝類、魚の切り身なんかの煮込み、美味かったのだがーー。暑く、大雨の続く季節で半日以上停電することもあり、冷蔵庫は止まってしまうことも頻繁にある。小奇麗なレストランでも、慎重にメニューは選...
村上春樹ファンだからといって、何もビールの飲み方まで真似する必要はないけれど。朝日堂の「ボストン便り」に、「美味しい瓶ビールの口飲み 」などと村上氏に記されると、やっぱり気になる。氏によると、「この数年のあいだ、僕が瓶から口飲みしてとくに美味しいと感じているビールは、ローリング・ロックと、バース・エールです。」らしい。私は、その両銘柄とも飲んだことが無い。ビールは、やはりグラスにちゃんと注いで、グ...
日本の大学に留学経験のあるアフリカ系フランス人の若い女性は、日本の教育の現場に「素直に生徒が議論できない」空気を感じたという。パリ大学で日本語を学んだ彼女は、日本語でのコミュニケーションにほとんど問題がない。留学中にある高校3年生を対象に、「自分の国の話」をすることになった。...
暑さと湿気で浅い眠りの中、遠雷が聞こえたような気がした。朝、格子窓を開けると、どんよりとした空模様だが、少し空気は冷ややかだ。窓に近い床が濡れているので、強い雨が降ったと知る。雨季になると、暑いが格子窓を閉めて寝なければならない。そうでなければ部屋中水浸しになることがある。コロニアル趣味の格子窓は、開放的で美しいが、ちゃんと締めても隙間風は入るし、雨滴も通り過ぎる。サッシ窓なら安心なんだけど、何だ...