ヘッセの偉大さは、目に見張るものがある。シッダールタは、ゆきあたりばったりに生まれた小説ではなく、考え抜かれた思惟が小説になっている。それでも、一気に読ませてくれるのは、さすがです。高橋健二の訳は、古いですが、悪くない。というか、ヘッセの文体が短くて、わかりやすい表現とうことが大きいでしょう。
驚くのは、存在と時間の概念に言及していることで、そこが気になるところでした。仏教に対する理解は深く、同時期クリシュマムルテイが提唱していた考えと同調するものの、より明確な解釈が示されています。クリシュマムルテイは、そこにある花や、今飛んできたその鳥、そこに真実があると言うのです。そして瞑想。シッダルタは、そこにたどり着いてからも長い旅をするのですが、シッダールタでは、カーマストラとの哀しき交わりと生まれる子供、その子供に棄てられて、また自分、真我を見出してゆくという、現実社会の接点から真我に到達する、見事な円環を描いています。ヘッセはこの流れを自分の中で体験したのでしょう。
シッダールタ ヘッセ作 高橋健二訳 新潮文庫
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