オルハン・パムクの本を見かけたのは、2年ほど前、フランス人の友人宅の書棚にあった
「私の名は紅」(邦訳:藤原書店、和久井路子訳 )の仏語版
Mon nom est Rouge でした。
トルコの作家ということと、変なタイトルだなと思った記憶があります。私は、ついつい人の書棚を見てしまうというか、好きなんです。もちろん許可はいただきますが。本の傾向で、その人の内面を憶測できるようで面白いし、またそれからの会話の糧にもなりますから。フランスというより欧州では、既に認知された作家というのが友人の談でした。
それからしばらく忘れていましたが昨年は
、「政治発言」(アルメニア人問題)でトルコ政府に逮捕拘留されたことで話題になり、3月に「雪」が邦訳、出版されたので読んでみた。
「雪」はトルコ語からの和訳で、トルコの事情に詳しい訳者による背景説明があって、理解に役立つ。とつとつとした語り口でありながら、想像力を刺激する描写は、読者を見知らぬトルコの辺境の街カルスの冬景色の中に引きずりこむ。
1990年代のトルコ、様々な政治勢力の入り乱れる国境の街を訪れた亡命したトルコ人の「詩人」Kaは、その後3日間で雪に閉ざされる街で起こる出来事の渦の中心に巻き込まれてゆく。
ドイツに亡命後一編の詩も書けなかった詩人の心に久々に湧き上がってくる詩の連作は、街での出来事の推移が次第に絡み合って、「一片の雪の結晶」ができあがる。
日本人には縁遠い、トルコの長い歴史と現代の状況が描かれ、特に教育の場での女子生徒のスカーフの着用を巡る事件が物語りの背景になっている。
入り乱れる様々なイスラム教セクトの活動家、テロによる殺人、暗躍する公安の取り締まり、そしてクーデター。
しかし、「政治小説」といっても、小林多喜二の「蟹工船」のような沈鬱なトーンではなく、思わず微笑むような洒脱な表現や、詩人のぎこちなくも真摯な恋のかけひきが描かれる。
その街で、生涯の詩集「雪」を得た詩人だったが、その最後はーーーー。
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貴方のお話から伺えるのには・・「雪」は難しい「政治小説」ではないのですか〜?読んでみたくなりますね。